プロアマ協定がない分、より熾烈?大学野球部が狙う高校生の条件は。
学生野球のスカウティングの始動は早い。
これ! と思う選手には、1年秋あたりから、所属する高校の監督さんに興味があるとの意思を伝える。
実戦の様子を見ながら、2年生になれば練習参加を勧めて、間近で実力の“本当のところ”を見極め、会話を重ねて自分のチームに合った性格かどうかを判断する。
大きな故障さえなければ、2年生の秋ごろに“内定”が出ることも珍しくないという。
試合を見に行けば、必ず試合終了まで見届け、球場の外で監督やお目当ての選手が出てくるのを待ち、熱心にアプローチしていることをアピールする。
ファンなら誰でも知っているような学生野球の監督さんが、球場の外でじっと出待ちをしている姿を私は何度も見ている。頭の下がる思いにかられる瞬間である。
プロ野球のスカウトたちは、高校生選手が退部届を出すまで、直接会って言葉を交わすことはできない。プロと高校野球との間には、スカウティングに関するいくつかの制約がある。
一方で、学生野球と高校野球、つまりアマチュア同士の間にはこうした“縛り”がない。いいことだと思う。
お互いにお互いを理解して、その上で進路を決める。大学進学という人生の一大事を互いの納得の上で決められる環境は、プロ入りのそれとは比較にならないほど健全であると考えたい。
プロ入りする選手には、選手と一度も面談せずにドラフトで指名し、高額な契約金を支払って入団させるという例もあるという。
かつてこの国には、お互い一度も会ったこともないのに、親同士が決めて婚姻関係を結ぶ、そんなことが普通に行なわれていた時期があったと聞く。思わず、それと重ねて笑ってしまったことがある。
また別の大学の監督は、このように語っていた。
「有名な強豪校ならいいんですよ。自分たちみたいな地方リーグのチームは、知名度もそんなにないし、学校がどこにあるのか……そこから説明しなきゃならない。去年、大学出たような若い高校の監督にも何度も頭を下げて、結構きびしいものなんですよ」